日本酒の作り方を完全解説|精米から瓶詰めまでの8工程、蔵人目線でわかりやすく

みなさん、こんにちは!SSI認定・日本酒名人の杜雄です🍶

この記事は「日本酒は好きだけど、どうやって作られているか知らない」という方に向けて書きました。専門用語は全部噛み砕いて説明しますので、知識ゼロでも安心して読み進めてください!

「日本酒って、お米からできてるんですよね?」

はい、その通りです。でも、「お米からどうやってお酒になるの?」と聞かれると、意外と答えられなくないですか?管理人も日本酒名人を取るまでは、なんとなく「お米→発酵→お酒」くらいの認識でした(笑)。

実はこの「なんとなく」を少しだけ深掘りすると、飲む1杯の味わいが全然変わるんです。ラベルに書いてある言葉が「読める」から「聴こえる」ようになる、とでも言いましょうか。

今回はそんな日本酒の製造工程を、難しい専門用語は噛み砕きながら、蔵人目線で全工程ご紹介します!


目次

🗺 まず全体像を把握しよう!製造工程マップ

細かい話の前に、まずは全体の流れをざっくり掴みましょう。

【原料処理】
  ① 精米(お米を削る)
  ② 洗米・浸漬(洗って水に浸ける)
  ③ 蒸米(蒸す)

【麹・酒母】
  ④ 製麹・麹造り(麹菌をはたらかせる)
  ⑤ 酒母づくり(酵母を育てる)

【発酵・搾り】
  ⑥ もろみ(三段仕込み・発酵)
  ⑦ 上槽(搾る)

【仕上げ】
  ⑧ 火入れ・貯蔵・瓶詰め

大きく「原料処理」→「麹・酒母」→「発酵・搾り」→「仕上げ」の4フェーズ、8ステップです。

それでは、各工程を順番に追っていきましょう!


① 精米(せいまい)——お米を「磨く」ところから始まる

すべての始まりは、玄米を削ることです。

「精米」とは玄米の外側を削り落として、中心のデンプンの純粋な部分だけを残す作業です。どれだけ削ったかを示す数字が「精米歩合(せいまいぶあい)」で、ラベルに「精米歩合60%」などと書いてあるのを見たことがある方も多いと思います。

「60%」なら、外側の40%を削り落として60%が残っている、という意味です。

なぜ削るの?

お米の外側にはタンパク質や脂質が多く含まれていて、これらがお酒になると「雑味」になりやすいんです。削れば削るほど、クリアで華やかな味わいに近づく。だから「精米歩合50%以下」の大吟醸はあんなにフルーティーなんですね。

逆に、あまり削らない純米酒はお米本来のコクや旨味が残って、どっしりした味わいになります。どちらが好みかは人それぞれ。でも「削り方が違うと味が変わる」という仕組みを知るだけで、選ぶ楽しみが格段に広がります!

精米歩合と特定名称酒(純米大吟醸・吟醸・本醸造など)の関係をもっと詳しく知りたい方はこちら→ 「お米を削る魔法」と「8つの呪文」:特定名称酒と精米歩合のディープな話


② 洗米・浸漬(せんまい・しんせき)——水分を「計算して」吸わせる

精米したお米を次は洗って(洗米)、水に浸けます(浸漬)。

「ふつうにお米を研いで水に浸けるだけじゃないの?」と思いますよね。でもここが実はかなり繊細な作業で、蔵によってはストップウォッチを持った蔵人が秒単位で浸漬時間を管理しています。

なぜかというと、お米に吸わせる水分量(吸水率)が、後工程の蒸し上がりや麹の付き方に直接影響するからです。早生米・晩生米でも吸水スピードが違うし、同じ酒米でも精米歩合によって変わる。気温や湿度も関係してくる。

「お米を水に浸けるだけ」に、これほどのシビアさがあるんです。蔵仕事の奥深さは、ここからもう始まっています。


③ 蒸米(じょうまい)——「炊く」ではなく「蒸す」理由

水を吸ったお米を、大きな甑(こしき)という蒸し器で蒸します。

「ご飯を炊くのと何が違うの?」という疑問、正しい疑問です!

炊くと、水分を必要以上に吸収して米粒全体がやわらかくなりすぎます。一方、蒸すと水分量を適切にコントロールできるため、理想の状態に仕上げることができます。

その理想の状態が「外硬内軟(がいこうないなん)」——外側は適度に硬く、内側はふっくら柔らかい状態です。

なぜこれが大事かというと、次工程の麹造りと発酵に直接関係するからです。

  • 麹造りの観点から: 外側が硬いことで麹菌の菌糸が表面に留まらず、米粒の柔らかい内側に向かってどんどん深く伸びていきます。菌糸が内部までしっかり入り込んだ麹は、強い糖化力を持つ理想の麹になります
  • もろみ発酵の観点から: 外側に適度な硬さがあることで、もろみタンクに入れてもすぐに溶けきらず、ゆっくりと溶けながら発酵が進みます。ゆっくりとした発酵は、味わいの複雑さと深みにつながります

蒸し上がった米は、使い道によって2種類に分けられます。

  • 麹米(こうじまい): 蒸し米の約2割。次の「製麹(麹造り)」工程に使われ、麹菌を育てるための米になります
  • 掛け米(かけまい): 残りの約8割。酒母やもろみの仕込みで、発酵タンクに直接投入される米です

つまり、蒸し米は「麹を育てるための米」と「発酵の燃料になる米」に役割分担されています。この後の工程で、それぞれがどう活躍するか追いかけてみてください!


④ 製麹・麹造り(せいきく・こうじづくり)——日本酒の「司令塔」を育てる

ここからが、日本酒造りの核心部分。

麹米(蒸し米の約2割)に「麹菌(こうじきん)」を振りかけ、温度・湿度を厳しく管理した「麹室(こうじむろ)」という部屋で約2日間かけて育てます。これを「製麹」といいます。

麹はなぜ必要なの?

お米のデンプンは、そのままでは酵母がアルコール発酵に使えません。デンプンを糖(ブドウ糖)に分解してあげる必要がある。その「分解役」を担うのが麹菌が出す**アミラーゼ(糖化酵素)**です。

簡単に言うと:

  • 麹菌 → デンプンをブドウ糖に変える
  • 酵母 → ブドウ糖をアルコールに変える

この2つが連携して、はじめてお米がお酒になれる。麹は「司令塔」であり「翻訳者」でもあるわけです。

麹造りは仕込みの中でも特に繊細な工程で、蔵によっては蔵人が麹室で一晩中泊まり込んで温度管理をするところもあります。


⑤ 酒母づくり(しゅぼづくり)——酵母を「鍛える」スターター

麹ができたら、次は「酒母(しゅぼ)」を仕込みます。蔵言葉で「もと」とも呼ばれます。

酒母とは、酵母(アルコール発酵の主役)を大量に増やすためのスターターです。掛け米・水・麹・酵母を小さなタンクに仕込み、1〜4週間かけて健康な酵母を育て上げます。

速醸・生酛・山廃の違い

酒母の作り方は大きく3種類に分かれます。

速醸(そくじょう)もと:外から乳酸を添加して素早く安定した環境を作り、約2週間で仕上げる。現代の主流。

生酛(きもと):蔵に棲みつく野生の乳酸菌の力を使って自然に乳酸を作る、伝統的な製法。約4〜6週間かかる。独特のコクと複雑味が生まれる。

山廃(やまはい):生酛の一部工程(山卸し)を省略した製法。労力を減らしつつ、生酛に近い個性的な酒質が生まれる。

3つとも「酵母を育てる」という目的は同じですが、アプローチが全然違う。この違いが、のちのお酒の味わいに大きく影響するんです。

生酛・山廃の世界をもっと深く知りたい方はこちら→ 「生酛・山廃」の深すぎる沼へようこそ!野生の乳酸菌と醸造家の戦いと奇跡の話


⑥ もろみ——日本酒の核心「並行複発酵」という奇跡

いよいよ、日本酒の発酵の本番です!

酒母を大きなタンクに移し、掛け米・麹・水を3回に分けて加えていきます。これを「三段仕込み(さんだんじこみ)」と言います。一度に全部入れずに3回に分けるのは、酵母が急激な量の変化に対応できるよう少しずつ環境に慣らすためです。

この3回の仕込みが終わったあと、20〜30日ほどかけてゆっくりと発酵が進みます。この状態のものを「もろみ」と呼びます。

並行複発酵(へいこうふくはっこう)——日本酒の核心にある仕組み

ここで、世界のお酒の歴史の中でも特異な現象が起きています。

ビールは先に麦芽でデンプンを糖化してから、別工程でアルコール発酵させます(逐次発酵)。ワインはブドウに糖がすでに含まれているので、そのまま酵母が発酵させます(単発酵)。

ところが日本酒は——

麹による糖化と、酵母によるアルコール発酵が、同じタンクの中で同時に進行します。

これを「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と言います。中国の黄酒(ホアンジウ)や韓国のマッコリなど同様の仕組みを持つお酒は世界に存在しますが、日本酒はその中でも特に精緻に発展させてきた醸造酒のひとつです。

なぜこれが優れているかというと、糖が一気に大量に生成されないため、酵母が過剰な糖に負けず、ゆっくりと安定して発酵できること。その結果、日本酒はワインの約2倍近い20%前後のアルコール度数に達することができます(加水前の原酒)。

管理人、これを知ったとき「お米すごっ!!」と声が出ました(笑)。


⑦ 上槽(じょうそう)——もろみを「搾る」

発酵が終わったもろみを搾って、澄んだお酒と「酒粕(さけかす)」に分けます。この工程を「上槽(じょうそう)」といいます。「搾り」と呼ぶ蔵も多いです。

💡 酒粕ミニ知識: 大吟醸の酒粕は、吟醸香が残って香りが高いのが特徴。また強く搾らない製法をとる蔵が多いため、少量しか取れず市場に出回りにくい希少品です。甘酒や粕汁に使うと、ふわっと上品な香りが楽しめます。

搾り方にはいくつか種類があります。

槽搾り(ふなしぼり):木の槽(ふね)にもろみを入れた袋を並べ、重みで自然に滴り落とすか、上から圧力をかけて搾る伝統的な方法。

袋吊り(ふくろつり):もろみを袋に入れて吊るし、自重だけで滴り落ちるのを待つ、最も優しい搾り方。「雫取り(しずくどり)」とも呼ばれ、最初に出てくるお酒は「あらばしり」として珍重されます。香りが繊細で、味の輪郭がはっきりしているのが特徴。

薮田式(やぶたしき):機械式フィルタープレスで効率的に搾る現代的な方法。多くの蔵で採用されています。

どの方法を使うかも、味わいに影響します。ラベルに「袋吊り」「あらばしり」とあったら、ちょっと特別な搾り方のお酒だと覚えておいてください!


⑧ 火入れ・貯蔵・瓶詰め——最後の「決断」

搾ったお酒は、多くの場合「火入れ(ひいれ)」という加熱処理を経てから瓶詰めされます。

火入れの目的は2つ。残っている酵母や酵素の働きを止めることと、雑菌を殺菌することです。これによって品質が安定し、常温でも保管・輸送できるようになります。

火入れは一般的に2回行われます。搾り直後に1回(生貯蔵する場合はここをスキップ)、瓶詰め直前にもう1回。

一方で、火入れを一切しないお酒が「生酒(なまざけ)」です。フレッシュで活きのいい香りと味わいが特徴ですが、要冷蔵で扱いがデリケート。火入れありと生酒、それぞれの良さがあって、「どっちが上」という話ではないんですよね。

火入れ・生酒・生詰め・生貯蔵酒の違いをもっと詳しく知りたい方はこちら→ ラベルの「生」ってどういう意味?火入れ・生酒・生詰め・生貯蔵酒を3分で完全整理!

火入れが終わったお酒は、タンクや瓶で貯蔵・熟成させてから出荷されます。新酒のフレッシュなまま出すか、じっくり熟成させてから出すか——このタイミングも蔵元の哲学が出るところです。


🔗 製造工程と「特定名称酒」の関係

ここまで読んでくださったみなさんはもう気づいているかもしれませんが、製造工程と「特定名称酒」は深く結びついています。

この表に「醸造アルコール」という言葉が出てきます。これは発酵・蒸留によって作られた純粋なアルコールを、搾る直前のもろみに少量添加する技術のことです。「薄める」ためではなく、①保存性を高める、②香りを引き立てる、③後味のキレをよくするという3つの目的で使われます。醸造アルコールを使わないお酒が「純米」系、使うお酒が「アル添」系と呼ばれます。

つまり「純米大吟醸」とラベルにあれば、それだけで「精米歩合50%以下・醸造アルコールなし」という工程上の事実がわかるし、「生酛造り」と書いてあれば「酒母の工程で野生の乳酸菌を使った」という話がラベル一枚で伝わってくるわけです。

製造工程を知ると、ラベルが読めるだけでなく、「このお酒を造るためにどれだけの手間がかかっているか」まで想像できるようになります。それが、1杯の味わいを深くしてくれるんです。

ラベルに書いてある言葉をもっと全体的に理解したい方はこちら→ ラベルの呪文を解読!初心者が迷わず『自分好みの1本』を見つけるための日本酒用語ガイド【完全版】


🍶 まとめ:製造工程を知ると、1杯が2倍おいしくなる

長くなりましたが、ここまでお付き合いいただいた方に、まとめてお伝えします。

日本酒の製造工程には、8つのステップがあります。

この8ステップのどこを変えても、味わいが変わります。同じ山田錦を使った純米大吟醸でも、酒母の作り方が生酛か速醸かで全然違う顔になる——それが日本酒のおもしろさであり、深さです。

次にお酒のラベルを見るとき、ちょっとだけ「このお酒はどんな工程で作られたんだろう」と考えてみてください。きっと、その1杯がいつもより少しだけ豊かに感じられるはずです🍶

テイスティングの楽しみ方をもっと深めたい方はこちら→ 日本酒テイスティングシートの前に読む|外観・香り・味わいを”言葉にする”基本ガイド

・20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
・お酒は適量を守ってお楽しみください。
・妊娠中や授乳期の飲酒は胎児・乳児の発育に悪影響を与える恐れがあります。

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