グラスに注いだ瞬間、涼しげなシルバーの輝き。
鼻を近づけると、グレープフルーツとマスカットが真っ先に飛び込んできて、その奥からすみれや青竹のニュアンスがふわっと立ちのぼる——
今回レビューするのは、京都・松井酒造の夏季限定酒——神蔵「南風(はえ)HAE」純米大吟醸 無濾過・無加水・生酒です🍶
以前このブログでも紹介した神蔵「露花」と同じ蔵の、季節限定シリーズの一本。あちらはスパークリングでしたが、今回は公式サイトの商品説明によると雄町(おまち)という酒米を使った、しっかり系の純米大吟醸です。
こんな方に特におすすめです。
- 夏らしいフルーティーな日本酒を探している方
- 「無濾過生酒」ならではのピチピチ感を体験してみたい方
- 京都・松井酒造のファンで、季節ごとの神蔵を飲み比べたい方
🍃 「南風」と書いて「はえ」と読む——季節をまとう神蔵シリーズ
まず驚いたのが、この銘柄名の読み方。「南風」は「みなみかぜ」ではなく「はえ」と読みます。
これは当て字ではなく、古くからある日本語の熟字訓(じゅくじくん)。「東風」を「こち」と読むのと同じ系統の読み方で、南から吹く風を指す言葉として使われてきました。松井酒造の季節限定シリーズは、この古い風の呼び名をそのまま銘柄名にしています。
- 春季限定:神蔵「東風(こち)KOCHI」
- 夏季限定:神蔵「南風(はえ)HAE」
- 秋季限定:神蔵「西風(ならい)NALAI」
季節が巡るごとに、違う方角から吹く風の名前をまとった一本が届く——なんとも粋な設計だと思いませんか?🍶
そしてもうひとつ、面白い符合があります。この「南風HAE」のラベル画「風鈴」を手がけたのは、日本画家の中島潔氏。「郷愁を誘う童画」で知られるこの画家は、業界で「風の画家」という異名を持っています。
風の名を冠したお酒に、風の画家が絵を寄せる。狙ったのか偶然なのかは分かりませんが、ラベルを眺めているだけで少し涼しくなる気がしました。
商品紹介

🏛️ 松井酒造について——洛中最古の蔵、鴨川のほとりで
松井酒造は享保11年(1726年)創業、京都市左京区に構える老舗蔵元です。仕込み水は比叡山から流れ出た地下水で、蔵の名前「鴨川蔵」は鴨川のほとりに立地することに由来しています。
管理人はこの蔵に実際に見学へ行っており、マンションの1階で洗米から瓶詰めまでの全工程を行っている驚きの現場を目にしてきました。蔵の詳しい歴史や見学レポートはこちらをどうぞ👇
🔗 マンションの1Fで、世界に通じる酒を造っていた。京都・松井酒造の蔵見学レポート
🔗 神蔵「露花」スパークリングレビュー|甘みは強いのに、軽い。京都・松井酒造の”濃醇シュワシュワ”乾杯酒
💧 「南風HAE」というお酒——サイダーを目指して、雄町で仕込む
公式サイトによれば、この「南風HAE」のコンセプトはサイダーやメロンソーダ。夏らしい爽快感を狙って造られたお酒だそうです。ボトルの色合いも「シャーベットグリーン」と表現されています。
公式オンラインショップの商品説明によれば、使用米は雄町(おまち)。大粒でどっしりとした酒米として知られ、しっかりとした味わいを出しやすい品種です。同ページには「大粒な酒造好適米『雄町』を使用し、しっかりと酒の味わいを舌に楽しませつつ、後口の引き際が良くなるように仕込みました」と説明されています。
※お手元のボトルラベル・テイスティングシートには原料米の記載がなかったため、この情報は松井酒造の公式オンラインショップの商品ページに基づくものです。
そして無濾過・無加水・生酒という仕上げ。ろ過を行わないぶん米由来の成分が残り、火入れ(加熱処理)をしない生酒は、活きた酵母の躍動感がそのまま瓶の中に閉じ込められています
基本情報

- 銘柄:神蔵 南風(かぐら はえ)HAE
- 製造会社:松井酒造株式会社(京都府京都市左京区)
- 使用米:雄町(※公式オンラインショップの商品説明より。ボトルラベルには記載なし)
- 精米歩合:50%
- アルコール度:15度
- 日本酒度:ー
- 特定名称:純米大吟醸
- 酵母:―
- 杜氏:―
- 製造日:2026.06
- 内容量:720ml
- 価格:720mL 3,685円/1.8L 7,040円(化粧箱ありはプラス220〜440円)
精米歩合50%(コメをなんと半分も削った、贅沢な造り)で純米大吟醸を名乗る一本。特定名称の見方が気になった方はこちらもどうぞ👇
🔗 「お米を削る魔法」と「8つの呪文」:特定名称酒と精米歩合のディープな話
テイスティングシート
*個人の感想です
テイスティングコメント
*個人の感想です
🎨 Tasting Experience:果実の華やかさと、雄町の骨太さが同居する一杯
✨ Visual:透明感のあるクリスタル×シルバー
グラスに注ぐと、透明感があり無色に近い液体。色調はクリスタルとシルバーが同居していて、涼しげな見た目です。ラベルの「シャーベットグリーン」というイメージそのままの、清涼感ある佇まいでした。
🌸 Nose:グレープフルーツを先頭に、華やかな香りの行列
第一印象は「華やかな」。
まず来るのはグレープフルーツと黄色いリンゴ、そしてマスカット。ここにすみれの花のような繊細な香りが重なります。さらに奥には青竹・新緑という和のニュアンス、上新粉(お米の粉)の柔らかな香り、そしてサワークリームのかすかな乳性感。
正直に言うと、公式が謳う「メロンやバナナ」の香りは、管理人の鼻には強くは感じられませんでした。その代わりに広がっていたのは、グレープフルーツとマスカットを軸にした、もう少し爽やかで青みのある果実感。同じお酒でも感じ方は人それぞれ、というのを実感した瞬間でした。
🍽️ Palate:まろやかな甘みと、力強い骨格
口に含んだ瞬間の第一印象は「やや強い」。公式情報にある雄町らしい、しっかりとした存在感があります。
甘みはまろやか。角のない、優しい甘さです。そこになめらかかつシャープな酸が重なり、輪郭をきゅっと引き締めます。苦みはコクを与えるタイプで、単調にならない複雑味を後押ししてくれます。
バランスは「溌剌とした」「力強い」の二つ。飲み口は軽やかなのに、芯のところに雄町の骨太さがしっかり残っている——このギャップが面白い一本でした。余韻はやや長め。
そしてコメント欄には、こう書き残していました。
「無ろ過、生酒。ピチピチと微炭酸感がする」
これはスパークリングのような炭酸ガス封入ではなく、無濾過生酒に特有の、瓶内にわずかに残ったガス感。舌の上でピチピチと弾けるこの感覚こそ、火入れをしていない生酒だけが持つ「生きている」証拠だと思います。
🍽️ ペアリング提案
雄町の骨太な旨味と、爽やかな果実香を活かすなら、こんな組み合わせがおすすめです。
- 鱧(はも)の湯引き — 京都の夏の味覚といえば鱧。梅肉や酢味噌のさっぱりとした酸味が、この酒の酸と響き合います
- 冷奴(生姜・みょうが添え) — サワークリームのニュアンスがあるので、大豆の風味とも好相性
- 鶏の唐揚げ(レモン添え) — グレープフルーツの香りに、レモンの酸を添えて輪郭をさらにくっきりと
- クリームチーズを使った前菜 — 香りにあるサワークリームの乳性感と寄り添う組み合わせ
温度帯はしっかり冷やして。生酒特有のピチピチ感を楽しむなら、キンキンに冷えたグラスで、香りが開ききる前の一杯目を味わってほしいです。
お酒を呑み終えて
先日、YOMOYAMANAGANO大阪会場のボランティアに参加してきました。今年で4回目、顔なじみのボランティア仲間とも久しぶりに再会。真夏で日本酒の消費が落ち込む時期にもかかわらず、チケットは完売。会場は大盛況で、関西の日本酒熱の高まりを肌で感じました。
ただ、反省もありました。
短い時間でお酒の特徴を伝えつつ、蔵の背景やストーリーまで織り交ぜて紹介する——これが、思っていた以上に難しかったんです。1杯を注ぐ間の数十秒で、「はい、次の方どうぞ」の波が容赦なく押し寄せてくる。伝えたいことの半分も言えないまま、次のグラスへ。
だからこそ、ブログという場所のありがたさを実感します。
今回の神蔵「南風HAE」も、「南風」を「はえ」と読む理由や、ラベルを描いた「風の画家」中島潔氏のこと、雄町という酒米の骨太さ——会場のカウンターでは絶対に語りきれない話を、ここでは好きなだけ書けます。
自己満足かもしれません。それでも、こうして一本のお酒に向き合って言葉を尽くす時間が、管理人にとってはたまらなく楽しいんです。
次のイベントでは、もう少し上手く伝えられるように。そう思いながら、涼しい部屋でグラスを傾けています🍶
・20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
・お酒は適量を守ってお楽しみください。
・妊娠中や授乳期の飲酒は胎児・乳児の発育に悪影響を与える恐れがあります。
🍶 関連レビュー・レポート
🔗 神蔵「露花」スパークリングレビュー|甘みは強いのに、軽い。京都・松井酒造の”濃醇シュワシュワ”乾杯酒 🔗 マンションの1Fで、世界に通じる酒を造っていた。京都・松井酒造の蔵見学レポート
📚 日本酒をもっと知りたい方へ
🔗 「お米を削る魔法」と「8つの呪文」:特定名称酒と精米歩合のディープな話 🔗 日本酒テイスティング完全ガイド|初心者でも”言葉にできる”楽しみ方

コメント