飛鸞 にこまる レビュー|食べるお米で醸した14度の生酛原酒。軽いのに、ちゃんと奥行きがある平戸の一本

目次

商品紹介

グラスに注ぐと、無色に近いクリスタルの透明感。

鼻を近づけると、グレープフルーツと黄色いリンゴの爽やかさ。その奥から、つきたてのお餅のようなふっくらした香りと、ヨーグルトのようなやさしい乳酸の香りが顔を出してきます——

今回レビューするのは、長崎県平戸市・森酒造場の「飛鸞(HIRAN)にこまる」です🍶

このお酒、スペックを見ただけで気になるポイントが3つもあるんです。

  • 原料米の8割が、酒米ではなくふだん食べるお米「にこまる」
  • 手間ひまのかかる伝統製法、生酛(きもと)造り
  • 加水をしない原酒なのに、アルコール度数は14度

「食べるお米で、生酛で、14度の原酒」。どれも個性の強い要素なのに、いったいどんな味になるのか。テイスティングシートを手に、じっくり向き合ってみました。

こんな方に特におすすめです。

  • 軽めの日本酒が好きだけど、「水っぽいのは物足りない」と感じる方
  • 生酛に興味はあるけど、どっしり重たいお酒は少し身構えてしまう方
  • その土地の米・水・人で造られた「地酒らしい地酒」を飲んでみたい方

🏝️ 飛鸞を醸す「森酒造場」——平戸の古い呼び名を背負った蔵

森酒造場があるのは、長崎県平戸市。公式サイトによると、明治28年(1895年)に「小松屋」の屋号で創業した蔵元です。2025年には創業130周年を迎えています。

銘柄名の「飛鸞(ひらん)」の由来が、とてもロマンチックなんです。

海から見た平戸の島影が、神霊の精が鳥と化した「鸞(らん)」が飛び立つ姿に似ていたことから「飛鸞島」と名付けられ、それが転じて「平戸」になった——そんな言い伝えにちなんでいるそうです。平戸のテロワール(土地の個性)を感じてもらうお酒を目指して、古い平戸の呼び名をブランドにしたとのこと。

島の名前の由来が、そのまま瓶に詰まっている。地酒好きにはたまらない話です✨

🔥 杜氏不在の蔵を、五代目が立て直した

今の飛鸞を語るうえで欠かせないのが、五代目蔵元杜氏の森雄太郎さんです(蔵元杜氏=蔵の家の人が自ら杜氏を務めるスタイル)。

報道やインタビュー記事によると、森さんが中学生の頃から蔵には杜氏がおらず、社員だけで地元向けの普通酒を造っていたそうです。森さんは大学で醸造学を学び、宮城県の「浦霞」で知られる佐浦で3年間修業。2017年に蔵へ戻ってからは「ほぼすべてを変えた」と語っていて、普通酒中心だった蔵が、今では約20アイテムを持つまでになっています。

Makuakeのプロジェクトページ(2019〜2020年)には、こんな言葉も並んでいました。

「人も米も水も100%平戸産」

仕込み水は、約1km先の山から専用の管で引いている。搾りは、昔ながらの槽(ふね)搾り。小さな蔵が、島の素材だけで勝負している姿が浮かんできます。


🌾 なぜ「食べるお米」なのか——長崎には独自の酒米がない

このお酒の主役は、にこまるというお米です。

にこまるは、農研機構の九州沖縄農業研究センターが育成した主食用のお米。暑い年でも品質が落ちにくく、食味はコシヒカリ並みと評価されている品種で、長崎県はいち早く奨励品種に採用しています。

では、なぜ酒米ではなく食べるお米を使うのか。

森酒造場の公式サイトには、長崎県には独自の酒米がないため、長崎の蔵として特色を出したいという思いから使い始めた、と書かれています。

さらに、杜氏の森さん自身のnoteによると、研究機関に酒米の開発を相談したところ「最低でも10年かかる」と言われたそうです。そこで「地元の原料を使ってお酒として表現する」というコンセプトから、県の奨励品種であるにこまるを選び、地元の農家さんに栽培をお願いした。修業先の浦霞は食用米をよく使っていたので、採用は難しくなかった——とのこと。

10年待つのではなく、今ある地元のお米で勝負する。この潔さ、かっこよくないですか?😂

ちなみに食用米は粘りが強く、手や道具にくっつきやすいため、酒造りには不向きと言われることもあるそうです。それでもあえて使う。そして酒名には「食べるとニコッと笑顔になるお米のように、飲んで笑顔になってほしい」という願いが込められています。

酒米と食用米の違いが気になった方は、こちらもどうぞ👇

🔗 「酒米について」酒米から学ぶ日本酒を楽しむための基礎知識。

基本情報

  • 銘柄:HIRAN にこまる
  • 製造会社:森酒造場
  • 使用米:麹米・山田錦20% 掛米・にこまる80%
  • 精米歩合:-
  • アルコール度:14度(原酒)
  • 日本酒度:ー
  • 特定名称:―
  • 酵母:―
  • 杜氏:―
  • 製造日:―
  • 内容量:1800ml
  • 価格:税込み3520円

ポイントは、麹米(麹をつくるためのお米)に酒米の王様・山田錦を使い、掛米(もろみに加えるお米)の8割をにこまるにしているところ。お酒の設計図を描く麹は山田錦に任せて、味わいの大部分は地元のお米が担っている、という構成です。

そして原酒(搾ったあと加水をしないお酒)で14度。原酒というと度数高めのイメージがある方も多いと思いますが、このお酒は加水なしで14度に仕上がっています。ラベルの「原酒」の意味など、用語をおさらいしたい方はこちら👇

🔗 ラベルの呪文を解読!初心者が迷わず『自分好みの1本』を見つけるための日本酒用語ガイド【完全版】

🦠 「生酛×14度の原酒」という組み合わせ

生酛(きもと)は、江戸時代から続く酒母(お酒のもとになる液体)の造り方。乳酸を外から加えるのではなく、自然界の乳酸菌が育つのを待つ、とても手間のかかる製法です。詳しくはこちらで解説しています👇

🔗 「生酛・山廃」の深すぎる沼へようこそ!野生の乳酸菌と醸造家の戦いと奇跡の話

森さんはインタビューで、生酛に挑戦した理由を「添加物のないもっと自然体に近い酒造りをしたい」と語っています。その原点は、修業先の佐浦での経験だそうです。

管理人の中では、生酛といえば「旨味と酸がしっかりした、どっしり系」のイメージがありました。でも、生酛×低アルコール原酒の組み合わせは、以前レビューした「仙禽 レトロ」(13度)でも出会っていて、軽やかさと生酛の奥行きが同居する面白さにハマった経験があります。

🔗 仙禽 レトロ — 江戸の粋と現代の感性が交差する。20年前の「仙禽」に再会する一杯

さて、平戸の生酛はどんな表情を見せてくれるのか。

テイスティングシート

*個人の感想です

外観(清澄度)

透明感がある霞んだ濁った
その他

外観(濃淡)

無色に近い淡いやや淡い
やや濃い濃い
その他

外観(色調)

クリスタルゴールドシルバー
グリーンイエロートパーズ
オレンジブラウン
その他

香り(第一印象)

若々しいさわやかな華やかな
ふくよかな芳醇なおだやかな
熟成香を感じるその他

香り(特徴)

グレープフルーツりんご洋梨
白桃バナナメロン
パイナップルマスカットライチ
スイカズラスミレアカシア
菩提樹セルフィーユ青竹
新緑紅茶月桂樹の葉
ヒノキ香木ゴボウ
朝鮮人参マッシュルーム椎茸
丁子シナモンビターチョコ
栗クルミアーモンド
炊いた米つきたての餅上新粉
白玉団子杏仁豆腐生クリーム
サワークリームヨーグルト発酵バター
クリームチーズ粘土腐葉土
石灰カラメルコーヒー
醤油ヨード香蜂蜜
スモーク香カビタマネギ
熟成チーズその他

味わい(第一印象)

軽いやや軽いやや強い
強いその他

味わい(甘味)

弱い上品なまろやかな
ふくよかな強い
その他

味わい(酸味)

爽やかな優しい丸みがある
なめらかなきめ細かいシャープな
しっかりとした力強い
その他

味わい(苦味)

控えめ穏やかなコクを与える
旨味がある強い
その他

味わい(バランス)

スムースなハツラツとしたドライな
まろやかなねっとりとしたコンパクトな
フラットな芳醇な厚みのある
力強いその他

味わい(余韻)

短いやや短いやや長い
長いその他

テイスティングコメント

*個人の感想です

🎨 Tasting Experience:爽やかな果実と、お米と乳酸のふくらみ

✨ Visual:無色に近いクリスタル×シルバー

グラスの中は、透明感があり、ほとんど無色に近い液体。色調はクリスタルとシルバーの二つに印をつけました。光にかざすと、うっすら銀色がのぞきます。見た目は、とことんクリア。

🌸 Nose:柑橘・りんご・ハーブ、そしてお餅とヨーグルト

香りの第一印象は「若々しい」と「さわやかな」の二つ。

特徴として印をつけた8つは、こんな顔ぶれでした。

  • 🍊 グレープフルーツ、黄色いリンゴ ——ほろ苦い柑橘と、穏やかに甘酸っぱいリンゴ
  • 🌼 すみれ、セルフィーユ(パセリに似たフランス料理のハーブ) ——花とハーブの、青く繊細なニュアンス
  • 🍚 炊いた米、つきたての餅 ——ふっくら、ほかほかしたお米の香り
  • 🥛 サワークリーム、ヨーグルト ——やさしい乳酸系の香り

面白いのは、8つのうち4つがお米と乳製品の香りだったこと。

最初はグレープフルーツやリンゴの爽やかさが前に出てくるんです。ところがグラスを回すうちに、炊きたてご飯やつきたてのお餅のような、ふっくらした香りがどんどん存在感を増してくる。さらにその下から、サワークリームやヨーグルトのような乳酸の香りがふわっと支えてきます。

「食べるお米」と「生酛」。ラベルに書かれた二つの個性が、そのまま香りに出ているような気がして、思わずニヤッとしてしまいました😂

🍽️ Palate:やや軽い入り口に、丸くきめ細かい酸

口に含んだ第一印象は「やや軽い」。14度らしく、重さを感じずにすっと入ってきます。

甘みは「上品な」。ベタつかず、お米の甘みがほんのりのる程度です。

そして、このお酒の真ん中にいるのが酸。印をつけたのは「丸みがある」と「きめ細かい」の二つでした。

生酛と聞いて、キリッと立った酸を想像していたら、いい意味で裏切られました。角がなく、きめの細かい酸が、舌の上にそっと広がっていく。軽い口当たりなのに水っぽさを感じなかったのは、この酸が味わいの骨組みになっているからかもしれません(管理人の推測です)。

苦みは「控えめな」。出しゃばらず、輪郭をそっと整えるくらいです。

全体のバランスは「スムースな」と「溌剌とした」。引っかかりのないなめらかさと、若々しく生き生きした明るさが同居しています。香りの第一印象の「若々しい」とも、きれいにつながっていました。

余韻は「やや長い」。軽い入り口からは想像しにくいくらい、お米と乳酸のニュアンスが、ふわっと長めに残ります。

軽いのに、ちゃんと奥行きがある。

これが、飲み終えて最初にシートの余白に書きたくなった一言です。そして、調子に乗るとするするいっちゃいます⚠️


🍽️ ペアリング提案

シートに残した香りと味わいから、合わせて楽しめそうな組み合わせを考えてみました(管理人の提案です)。

  • 白身魚のカルパッチョ(柑橘・ハーブ添え) —— グレープフルーツやセルフィーユのニュアンスと、爽やかにリンクしそう
  • クリームチーズのおかか和え —— サワークリームやヨーグルトの乳酸の香りに、クリームチーズのコクが寄り添います
  • 塩むすび —— 炊いた米・つきたての餅の香りを持つお酒に、あえてシンプルなお米を。食べるお米同士の、ちょっと変わった共演です🍙
  • 鶏の塩焼き —— 控えめな苦みと上品な甘みが、シンプルな塩味の邪魔をしません

温度帯は、まずは冷やして。爽やかな果実の香りから楽しめます。少しずつ温度が上がってくると、お米や乳酸のふくらみが前に出てくるので、グラスの中の変化もぜひ味わってみてください。

📋 まとめ

項目印象
外観無色に近い、クリスタル×シルバーの透明感
香り柑橘・りんご・ハーブの爽やかさの奥に、お餅と乳酸のふくらみ
味わいやや軽い入り口に、上品な甘みと丸くきめ細かい酸。バランスはスムースで溌剌
余韻やや長く、お米と乳酸のニュアンスが残る
ストーリー長崎に独自の酒米がないから、地元の食べるお米で勝負した平戸の生酛原酒
おすすめシーン食中酒として、軽めの和洋の料理と一緒に

こんな人に特におすすめ:

  • 軽めのお酒が好きだけど、物足りなさは感じたくない方
  • 生酛の入り口として、重すぎない一本を探している方
  • 「その土地のお米で造ったお酒」の物語ごと楽しみたい方

テイスティングシートの言葉の意味が気になった方は、日本酒テイスティング完全ガイドもあわせてどうぞ。

お酒を呑み終えて

最近の管理人、和菓子と日本酒のペアリングにすっかりハマっています🍡

きっかけは、大阪で参加した日本酒のイベント。そこで和菓子と日本酒を合わせる体験をして以来、すっかりこの組み合わせのとりこです。

「お菓子と日本酒?」って、ちょっと変な組み合わせに感じますよね。管理人も最初はそうでした😂

でも、よく考えてみると、和菓子って日本の食べ物なんです。お米から生まれた日本酒と、日本の食文化の中で育ってきた和菓子。マッチする土台は、最初からちゃんとあるんですよね。

そんな頭で今回のシートを見返すと、香りの欄に「つきたての餅」の文字。お米の香りがふっくら広がるこの一本なら、お餅を使った和菓子とも仲良くなれそうだな……と、つい想像がふくらんでしまいました(まだ試していないので、これは管理人の妄想です)。

みなさんも、騙されたと思って一度、日本酒と和菓子のペアリングを試してみてほしいです。「え、合うじゃん!!」の瞬間が、きっと待っています🍶


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