「その他の醸造酒」とは何かを深掘りした前回の記事で、管理人はひとつ大事なことに触れていませんでした。
「リキュール」の存在です。
当ブログでレビューしてきたヨーグルト系のお酒たち(超濃厚ヨーグルト酒、信乃大地)や、鳳凰美田 いちご。これらは実は「その他の醸造酒」ではなく、酒税法上「リキュール」に分類されます。
同じように日本酒の技術がベースにあって、見た目も棚での並びもそっくり。なのに、法律上の分類は別物。「え、何が違うの?」となった方、正直でよろしいです😂 今回はこの2つの分類線を、とことん整理していきます。
🍶 30秒でわかる結論
まず結論から。
「その他の醸造酒」と「リキュール」の分かれ目は、「原料を”一緒に発酵させた”か、”すでにできたお酒に後から混ぜた”か」です(国税庁「酒税法における酒類の分類及び定義」より)。
- その他の醸造酒:ホップやコーヒー豆などの副原料を、発酵の過程から一緒に仕込む
- リキュール:すでに完成した清酒・純米酒に、ヨーグルトや果実などを後から混和(ブレンド)する
見た目や飲み口が似ていても、「発酵に参加させたか」「完成品に混ぜただけか」で、法律上はまったく別の品目になるんです。
⚖️ そもそもの位置づけ——2つは”別グループ”の住人
前回の記事でも紹介した通り、酒税法は酒類を大きく4つに分類しています(国税庁資料より)。
| 大分類 | 代表的なお酒 |
|---|---|
| 発泡性酒類 | ビールなど |
| 醸造酒類 | 清酒、果実酒、その他の醸造酒 |
| 蒸留酒類 | 焼酎、ウイスキーなど |
| 混成酒類 | 合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒 |
ここがポイントです。「その他の醸造酒」は醸造酒類というグループに属していますが、「リキュール」は混成酒類という、まったく別のグループに属しています。
名前の響きだけ見ると兄弟のようですが、戸籍でいうと他人同士。似ているようで、法律上のスタート地点からして違うんです。
🔍 定義を並べて比べてみる
国税庁の資料には、それぞれ次のように定義されています。
| 品目 | 定義(国税庁資料より要約) |
|---|---|
| その他の醸造酒 | 穀類、糖類等を原料として発酵させたもの(アルコール分20度未満・エキス分2度以上) |
| リキュール | 酒類と糖類等を原料とした酒類でエキス分2度以上のもの |
注目してほしいのは動詞です。
「その他の醸造酒」の定義には「発酵させたもの」とあります。原料(穀類・糖類など)を、そこから発酵させてお酒にしていく——つまり醸造そのものによって生まれたお酒、ということ。
一方「リキュール」の定義には、発酵の話が出てきません。原料は「酒類」——すでにアルコール分を持ったお酒そのものです。そこに糖類などを混ぜ合わせてつくる。だから「混成酒類」なんです。
「発酵で生まれた酒」か、「できあがった酒に何かを混ぜた酒」か。 これが2つを分ける本質的な違いです。
🥛 実例で見る——ヨーグルト系はなぜ「リキュール」なのか
言葉だけだとイメージしづらいので、当ブログで実際にレビューした銘柄で確認してみましょう。
超濃厚ヨーグルト酒(ジャージー)——「清酒にヨーグルトを合わせた」
宮城・新澤醸造店が手がけるこの一本、商品説明にはこうあります。
ジャージー牛乳由来の”濃いコク”を活かすため、清酒にヨーグルトを合わせたスタイルを採用。
清酒という完成品に、ヨーグルトを後から合わせている。だから分類はリキュールです。
信乃大地 信州ヨーグルトのお酒——「純米酒を合わせて」
長野・高橋助作酒造店のこの一本も同じ構造です。
黒姫高原で育った牛の生乳から作られたヨーグルトと、蔵自慢の純米酒を合わせて造られています。
こちらも純米酒という完成品にヨーグルトを合わせるスタイル。だからリキュール。
鳳凰美田 いちご——完熟いちごを使ったリキュール
栃木・小林酒造の「鳳凰美田 いちご」も、酒税法上はリキュールに分類される一本。完熟とちおとめを贅沢に使い、まさに”飲むイチゴスイーツ”として仕上げられています。
☕ 対して「その他の醸造酒」は——発酵そのものに参加させる
一方、前回の記事で紹介した4本は、副原料を発酵の過程から一緒に仕込むタイプです。
| 銘柄 | 副原料 | 仕込み方 |
|---|---|---|
| haccoba「珈琲店」 | コーヒー豆 | 米麹と一緒に発酵 |
| 稲とアガベ「DOBUROKU〈破〉参」 | コーヒー(コラボ) | 搾らずそのまま、発酵段階から |
| 楽器正宗「alternative 2026」 | 蜂蜜・ホップ | 発酵の過程で投入 |
| 木花之醸造所「出汁パンチ」 | 鰹節・梅干し | 発酵に直接組み込む |
これらはどれも「できあがったお酒に後から混ぜる」のではなく、発酵という化学反応そのものに副原料が参加しているのがポイント。だから「醸造酒類」の一員として「その他の醸造酒」になります。
「発酵の主役として参加するか」「発酵が終わったあとにゲスト出演するか」——ちょっと乱暴に言うと、そんなイメージです😂
🏷 じゃあ、このリキュールは「クラフトサケ」と呼んでいいの?
ここまで読んで、こう思った方もいるはずです。
「日本酒の技術がベースで、清酒の枠から外れた自由な発想のお酒——それって、クラフトサケの定義そのものでは?」
管理人も同じ疑問を持ったので、クラフトサケブリュワリー協会公式サイトの情報を調べてみました。協会の公式な定義・会員基準に沿って言葉を使うなら、「クラフトサケ」とは呼ばない方が正確です。理由は4つです。
理由① 該当する蔵が、協会の会員一覧にいない
超濃厚ヨーグルト酒の新澤醸造店、信乃大地の高橋助作酒造店、鳳凰美田いちごの小林酒造。この3蔵はいずれも、クラフトサケブリュワリー協会の公式会員一覧には含まれていません(2026年8月時点、協会公式サイトより)。3蔵とも歴史ある清酒蔵で、看板銘柄(伯楽星、鳳凰美田など)を持ちながら、その一商品ラインとしてリキュールを手がけている——という位置づけです。
理由②「クラフトサケ」は商標であり、協会が定義・許諾管理している
協会公式サイトには「『クラフトサケ』という言葉は株式会社モトックスが商標を所有しており、本協会会員に限り同社より許諾を得て使用している。会員以外が名乗る『クラフトサケ』は本協会とは無関係」と明記されています。つまり、製法や思想が似ていても、会員でない蔵の商品を第三者が「クラフトサケ」と呼ぶこと自体、正確な言葉の使い方ではないということです。
理由③ 協会が挙げる具体例は、どれも「発酵プロセスの変更」
協会公式サイトが「クラフトサケ」の例として挙げているのは、「搾らないどぶろく」や「フルーツ・ハーブなどの副原料を入れる」といった、発酵プロセスそのものを変える手法です。これは、まさに前半で見た「その他の醸造酒」の仕組みと一致します。一方、「完成した清酒にヨーグルトを後から合わせる」というリキュールの手法には、協会サイトのどこにも言及がありません。
理由④ 協会の会員自身も、リキュールとクラフトサケを別ブランドで売っている
実は、協会会員の稲とアガベは、自社オンラインストアで梅・レモン・珈琲のリキュールを実際に販売しています(SANABURI distilleryというブランド名)。
稲とアガベ自身のショップ構成を見ると、これらのリキュールは「交酒 花風」などが並ぶ「CRAFT series」(クラフトサケのライン)とは明確に別カテゴリとして扱われています。製造者表記も稲とアガベ株式会社ではなく「株式会社SANABURI」という別法人。
ただし、ここは正確に書いておきたいのですが、この梅リキュールのベースは清酒や純米酒そのものではなく、粕取り焼酎を再蒸留したスピリッツです(商品説明に「粕取り焼酎を再蒸留したスピリッツをブレンドした原酒で漬け込んだ」と明記)。粕取り焼酎は、清酒を搾ったあとに残る酒粕を原料とする蒸留酒なので、日本酒の技術と無関係というわけではありません。ただ、超濃厚ヨーグルト酒や信乃大地のように「清酒・純米酒という完成品そのもの」をベースにするのとは違い、こちらは「清酒醸造の副産物(酒粕)を、さらに蒸留してから使う」という一段階違うアプローチです。同じ「リキュール」という品目でも、ベースとなる酒の中身はこれだけ幅があります。
とはいえ、「日本酒(清酒そのもの)をベースにしたリキュールではない商品でも、協会員は自社ブランドの中でクラフトサケとリキュールをはっきり分けて売っている」という事実そのものは、クラフトサケとリキュールが別カテゴリとして扱われていることの傍証にはなると思います。
ちなみに、haccobaと木花之醸造所の商品ラインナップ(オンラインストア全商品)を確認したところ、この2蔵にはリキュールというカテゴリの商品自体がありませんでした(2026年8月時点)。
まとめると
「その他の醸造酒」=クラフトサケが使う分類、「リキュール」=別グループの分類、というのが酒税法・協会定義の両面から見た整理です。当ブログの実飲8銘柄まとめでヨーグルト系リキュールを「クラフトサケの仲間」という言い方に留めていたのは、実はこういう理由があったんです。
管理人の私見——日本酒ベースのリキュールは、呼んでもいいのでは
ここからは協会の定義を離れた、管理人個人の意見です(※このあたりは管理人の個人的な考えです)。
リキュールは、上で見た梅リキュールのように焼酎やスピリッツをベースにすることもあれば、超濃厚ヨーグルト酒や信乃大地のように清酒・純米酒そのものをベースにすることもあります。同じ「リキュール」でも、ベースの酒がまったく違うんです。
協会の定義・会員基準に従えば、これらは今のところ「クラフトサケ」とは呼べません。それは事実として尊重すべきだと思います。ただ、清酒・純米酒という完成した日本酒をベースに、そこへヨーグルトや果実を合わせて新しい味を生み出す——この発想自体は、クラフトサケが体現している「日本酒の技術をベースに、清酒の枠の外で自由な発想を実現する」という精神と、かなり近いところにあるとも感じます。
なので個人的には、日本酒(清酒・純米酒)をベースにしたリキュールは、将来的に「クラフトサケの仲間」以上の位置づけがあってもいいのでは、と思っています。もちろんこれは協会の定義を書き換えるべきという話ではなく、あくまで一飲み手としての感覚です。言葉の厳密さと、お酒としての面白さは別の話。管理人としては、どちらも同じくらい興味深く飲んでいます🍶
🤔 じゃあ、味わいにも違いは出るの?
ここは管理人の実飲経験からの感覚になりますが(クラフトサケ実飲8銘柄まとめでも触れた通り)、リキュール勢(ヨーグルト系・いちご)は総じて甘みが前面に出て飲みやすい傾向がありました。すでに完成した清酒・純米酒の骨格の上に、ヨーグルトや果実の風味を”デザート的に”乗せているぶん、日本酒が苦手な人でも入りやすい味わいに感じます。
対して「その他の醸造酒」勢(haccoba・DOBUROKU・出汁パンチなど)は、副原料が発酵そのものに溶け込んでいるぶん、味の輪郭がより複雑で個性的。コーヒーや出汁の主張が強く出て、好みがはっきり分かれる印象でした。
もちろんこれは管理人が飲んだ範囲での感覚であり、すべてのリキュール・その他の醸造酒に当てはまるわけではありません。ただ「どちらから試すか迷う」という方には、ひとつの目安になると思います。
📝 まとめ
最後に、今日のポイントをおさらいします。
- 「その他の醸造酒」=醸造酒類。穀類・糖類等を原料として発酵させたもの
- 「リキュール」=混成酒類。すでに完成した酒類に糖類等を混ぜ合わせたもの
- 分かれ目は「発酵の過程から一緒に仕込んだか」「完成品に後から混ぜたか」
- 当ブログのヨーグルト系(超濃厚ヨーグルト酒・信乃大地)や鳳凰美田いちごはリキュール、haccoba珈琲店やDOBUROKU〈破〉参、出汁パンチなどはその他の醸造酒
- リキュールはベースの酒が焼酎・スピリッツのこともあれば、清酒・純米酒のこともある。ベースが何であれ品目は同じ「リキュール」
- 協会の定義・会員基準に従えば、クラフトサケと呼べるのは「その他の醸造酒」側。ただし管理人個人としては、清酒・純米酒をベースにしたリキュールはクラフトサケの精神に近いとも感じている(あくまで私見)
ラベルの隅にある「リキュール」の文字を見つけたら、そのお酒はきっと「完成した日本酒に、もうひと工夫を加えたい」という造り手の遊び心の結晶。「その他の醸造酒」の文字を見つけたら、それは「発酵そのものから新しい味を生み出したい」という挑戦の証です。
どちらも、日本酒の技術を土台にしながら、それぞれ違う方向に自由を広げているお酒たち。次に気になる一本を手に取ったら、ラベルの分類名にもぜひ注目してみてください🍶
✍️ 編集後記
正直に言うと、この記事を書くまで管理人も「リキュール」と「その他の醸造酒」を、なんとなく同じような”日本酒の仲間”として一緒くたに扱っていました。国税庁の資料を読み込んで、「発酵させたもの」と「酒類を原料とした」という定義の一文字一文字の違いに気づいたとき、頭の中でようやく線が引けた感覚がありました。
超濃厚ヨーグルト酒や信乃大地を飲んだときの「これ、日本酒なの?」という驚きと、haccobaの珈琲店を飲んだときの驚き。似たような衝撃を受けたはずなのに、法律上はまったく違う道を通ってグラスにたどり着いていた——そう考えると、なんだか同じ棚に並んでいることが、逆に感慨深く思えてきます。
「これってクラフトサケって呼んでいいの?」という疑問を確かめるために協会の会員一覧やリキュール勢の商品ラインナップまで調べ直したときは、正直ちょっとドキドキしました。もし該当蔵が会員だったら記事の結論が変わっていたので😂 結果的に「協会の定義上は呼ばない方が正確」という着地になりましたが、これは優劣の話ではありません。商標や分類のルールを守りながら、それぞれの蔵がそれぞれの持ち場で自由な発想を形にしている——その事実の方が、管理人にはずっと面白く感じられます。
それでも、超濃厚ヨーグルト酒や信乃大地を飲んだときの「これ、日本酒の技術でここまでできるんだ」という感動は、haccobaやDOBUROKU〈破〉を飲んだときの感動とまったく同じ種類のものでした。だからこそ、日本酒(清酒・純米酒)をベースにしたリキュールについては、個人的には「クラフトサケの仲間」よりもう少し近い場所に置いてあげたい気持ちがあります。ルールはルールとして尊重しつつ、飲み手としての実感も大事にしていきたいです。
分類を知れば知るほど、選ぶ楽しみが増えていく。今回もまた、地味だけど満足度の高い深掘りになりました。
本記事の情報は2026年8月時点のものです。酒税法の詳細は国税庁の公式資料をご確認ください。
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