いきなり自己紹介で恐縮ですが、当ブログのドメイン名は japanesecraftsake.com といいます。
そう、「クラフトサケ」と名乗っておきながら——「クラフトサケとは何か」を正面から解説した記事が、今まで一本もありませんでした😂
灯台下暗しにもほどがある。というわけで今回は、当ブログの看板テーマであり、いま日本酒の世界でいちばん熱い新ジャンル「クラフトサケ」の正体を、じっくり解説していきます!!
🍶 クラフトサケとは?30秒でわかる答え
まず結論から。
クラフトサケとは、日本酒(清酒)の製造技術をベースに、お米を原料としながら、従来の「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた新ジャンルのお酒のことです。これは後ほど紹介する「クラフトサケブリュワリー協会」が掲げている定義です(協会公式サイトより)。
……ちょっと硬いですね。管理人なりに噛み砕くと、こうなります。
「日本酒の造り方で仕込んでいるのに、法律上は日本酒と名乗れないお酒」
たとえば、こんなお酒たちです。
- 発酵の途中でホップを加えたお酒
- フルーツやハーブ、コーヒー豆と一緒に発酵させたお酒
- 搾らずにそのまま瓶詰めしたどぶろく
どれも米と米麹(こうじ)が主役。飲めばちゃんと「日本酒の親戚だ」とわかる味わいです。でも法律上の分類は日本酒ではなく「その他の醸造酒」。
「その他」なんて地味な響きですが、実態は正反対。ここには、固定概念から自由になった発酵の未来が詰まっています✨
⚖️ なぜ「日本酒」と名乗れないのか——酒税法の壁
ここで、法律の話を少しだけ。難しくないので安心してください!
日本の酒税法では、「清酒(日本酒)」と名乗るための条件がきっちり決まっています。ポイントは2つ。
- 原料は米・米麹・水(+認められた少量の副原料)であること
- 「こす」工程(お酒と酒粕を分ける工程)を経ること
つまり——
- コーヒー豆やホップを入れた瞬間、日本酒ではなくなる(原料のルール違反)
- 搾らずにそのまま瓶に詰めた瞬間、日本酒ではなくなる(「こす」工程がない)
こうして日本酒の定義からはみ出したお酒は、「その他の醸造酒」という分類になります。ラベルの隅っこに小さく書いてあるので、クラフトサケを手に取ったらぜひ探してみてください。ラベルの読み方ガイドで紹介した「ラベル=蔵元からの愛のメッセージ」は、クラフトサケでも健在です🌸
「わざわざ日本酒の定義から外れるなんて、もったいなくない?」と思った方。実は逆なんです。あえて外れることに、このジャンルの核心があります。
🔑 クラフトサケ誕生の背景——「新規の清酒免許が下りない」という現実
ここが本記事でいちばん大事なところです。
実は現在の日本では、日本酒(清酒)の製造免許を新規で取得することが、実質的にできません。国内市場向けの清酒免許は長年新規発行されておらず、新しく日本酒造りを始めたければ、既存の酒蔵を買収するくらいしか道がなかったのです。
2021年春に規制緩和があったものの、それも「海外への輸出用の日本酒に限る」という条件付き。新潟のクラフトサケ醸造所・LAGOON BREWERY(ラグーンブリュワリー)の代表はこの経緯を公式サイトで詳しく語っていて、条件付き解禁を「大きな一歩」と歓迎しつつ、国内向けには「その他の醸造酒」免許で挑戦する道を選んだと明かしています(LAGOON BREWERY公式サイトより)。
つまりクラフトサケは、「日本酒を造りたい。でも清酒免許は取れない。それなら『その他の醸造酒』の免許で、米の酒の新しい形を醸そう」——そんな模索の中から生まれたジャンルなんです。
管理人はこう考えています——規制は「壁」であり「守り」でもある
正直に言うと、新規免許が下りない現状には、もどかしさも感じます。熱意ある造り手が「日本酒」を名乗れないのは、やっぱり切ない。
でも同時に、管理人はこの規制を「必要なもの」だとも考えています。日本酒は、長い年月をかけて磨かれてきた、日本の大切で価値のある文化。いろいろな角度からチャレンジできる透明性や多様性は、業界を活性化させると思います。ただ、多様性だけがどんどん進んでいくと、守るべき文化や歴史が薄れてしまう気もするのです。
これは日本酒に限った話ではなく、歌舞伎のような日本の伝統文化にも共通する構図だと思います。「守り」と「挑戦」のバランス——簡単に答えの出ない、でも考える価値のあるテーマです(※このあたりは管理人の個人的な考えです)。
そして大事なのは、規制の中でも、やれることはあるということ。実際、既存の蔵を受け継ぐ形で、日本酒の世界に新しい風が吹き込まれる例はいくつもあります。
たとえば長野・安曇野の甍(いらか)酒蔵。1665年(寛文5年)創業の歴史ある酒蔵を事業承継し、北アルプスに囲まれた松川村に新蔵を建設して酒造りを始めています。杜氏を務めるのは、大信州酒造で約30年にわたり醸造統括責任者を務めた田中勝巳氏(甍酒蔵公式サイトより)。当ブログでも大信州のおりがらみ生原酒をレビューしましたが、あの大信州を支えた腕が、新しい土地で次の物語を始めている——そう思うと胸が熱くなります。
新潟には、1908年(明治41年)創業の小黒酒造が2014年にDHCグループの一員となって「DHC酒造」に、そして2026年4月からは「新潟一粒酒造」として新たな門出を迎えた例もあります(Sake Worldの取材記事より)。時代の波に翻弄されながらも、蔵の火を消さずにつないでいく。ちなみにこの蔵があるのは、LAGOON BREWERYと同じ福島潟の近く。潟のほとり、なにかと熱いエリアです🍶
厳しい道かもしれないけれど、手段はある。そのひとつの答えが、「その他の醸造酒」という免許で米の酒を醸すクラフトサケだった——管理人はそう捉えています。
™️ ちょっと注意——「クラフトサケ」は実は商標です
ここでひとつ、知っておくと通ぶれる(そして正確さのために大事な)話を。
「クラフトサケ」という言葉、実は株式会社モトックスという酒類卸売会社が商標を所有しています。クラフトサケブリュワリー協会は、同社から許諾を得たうえでこの名称を使用しており、協会の公式サイトには「会員以外が名乗る『クラフトサケ』については、本協会とは無関係」と明記されています(協会公式サイトより)。
だから、世の中で「クラフトサケ」「クラフト酒」と呼ばれているものが、すべて協会の定義に当てはまるわけではありません。小規模でこだわりのある地酒を英語圏で「craft sake」と呼ぶケースもあり、言葉としてはまだ発展途上。
当ブログでは、協会の定義する「日本酒の技術ベース×法的に日本酒と呼べないお酒」を軸に「クラフトサケ」という言葉を使っていきます。
🏭 クラフトサケブリュワリー協会と、注目の醸造所たち
2022年6月27日、クラフトサケの造り手たちが集まって「クラフトサケブリュワリー協会」が設立されました。「クラフトサケの醸造所を増やす」「知名度を高める」「日本酒とクラフトサケが共存できる未来をつくる」を目的に掲げています(協会公式サイトより)。
2026年7月現在、公式サイトの会員一覧には準備中の醸造所を含めて13者が名を連ねています。その中から、管理人が特に注目している醸造所を紹介します!
| 醸造所 | 所在地 | 創立 | ここがスゴい |
|---|---|---|---|
| haccoba(ハッコウバ) | 福島県南相馬市 | 2021年2月 | 東北の伝統製法「花酛(はなもと)」を現代に復活。ホップやコーヒーと米の発酵を融合 |
| 稲とアガベ | 秋田県男鹿市 | 2021年9月 | 旧駅舎を改装した醸造所。「交酒(こうしゅ)」という独自コンセプトで文化と文化を交差させる |
| 木花之醸造所(ALL WRIGHT) | 東京都台東区 | 2020年6月 | 浅草のまちなか醸造所。どぶろくから実験的なLABシリーズまで |
| LAGOON BREWERY | 新潟県新潟市 | 2021年11月 | 福島潟のほとりの小さな蔵。銘柄「翔空(しょうくう)」で多様なSAKEを世界へ |
| ハッピー太郎醸造所 | 滋賀県長浜市 | 2022年1月 | 「醗酵でつなぐ、しあわせ。」を掲げ、完熟糀(こうじ)で醸すクラフトどぶろくが主軸。ハーブやホップを使った「something happy」シリーズも |
haccoba——「酒づくりをもっと自由に」
haccobaが掲げるのは「酒づくりをもっと自由に」。東北の一部地域に伝わるどぶろく製法「花酛」——花や植物を酒母に加える伝統技法——を出発点に、クラフトビールのカルチャーで日本酒を再編集しています(haccoba公式サイトより)。ホップを加えた定番「はなうたホップス」から、コーヒー豆と共に発酵させた「珈琲店」まで、ジャンルの垣根を軽々と越えてきます。
稲とアガベ——「男鹿の風土を醸す」
秋田県男鹿市の旧駅舎から始まった稲とアガベ。経営理念は「男鹿の風土を醸す」。米と米麹をフルーツやハーブなどと共に発酵させたお酒を「交酒(こうしゅ)」と名付け、日本酒の発酵技術でワインやビール、シードルといったあらゆる文化を交差させる——という壮大なビジョンを掲げています(稲とアガベ公式サイトより)。酒造りにとどまらず、まちづくりまで視野に入れた活動は、もはや醸造所の枠を超えています。
LAGOON BREWERY——潟のほとりから世界へ
新潟市の福島潟という水辺のほとりに2021年に誕生した小さな蔵。「翔空」という銘柄名には、生物の多様性を育む潟で醸された多様なSAKEが、渡り鳥のように世界へ羽ばたいてほしいという想いが込められています(LAGOON BREWERY公式サイトより)。
ハッピー太郎醸造所——糀屋が醸す「クラフトどぶろく」
滋賀県長浜市で「醗酵でつなぐ、しあわせ。」を掲げる醸造所。糀屋ならではの完熟糀を使ったフレッシュな「ハッピーどぶろく」を軸に、ハーブ・フルーツ・ホップなどの副原料を加えた「something happy」シリーズを展開しています(ハッピー太郎醸造所公式サイトより)。どぶろくだけでなく糀・甘酒・味噌といった発酵食品まで手がけていて、「発酵文化の入り口」としての間口の広さが光ります。管理人はまだ未飲なので、飲んだら必ずレビューします……!!
🥂 管理人が実際に飲んだクラフトサケたち
「で、結局おいしいの?」——はい、ここに答えます。当ブログではすでに、協会会員3蔵のお酒を実際に飲んでレビューしています!
haccoba「珈琲店」——コーヒーか、日本酒か
エチオピア産コーヒー豆×米麹という異次元の組み合わせ。日本酒名人とコーヒーマイスター、ふたつの資格が同時に起動して、どちらも答えを出せないまま、気づいたらグラスが空になっていました😂
コーヒーでも、日本酒でもない。「おいしい」だけが残る。
👉 これは日本酒か、コーヒーか──haccoba「珈琲店」レビュー
稲とアガベ「DOBUROKU〈破〉参」——どぶろく×浅煎りコーヒー
どぶろくの既成概念を打ち破る「DOBUROKU〈破〉」シリーズの第3弾。同じ男鹿市の「さとやまコーヒー」とのコラボで、見た目はまるでカフェオレ。飲めば浅煎りコーヒーの軽やかな苦味と酸味が主役で、どぶろくの常識が音を立てて崩れます。地域を巻き込む酒造りの実例としても必見です。
木花之醸造所「出汁パンチ」——「ぼくのかんがえたさいきょうのあつかん」
浅草の木花之醸造所によるLABシリーズ第二弾。鰹節と梅干しを使い、「そもそも出汁でお酒造っちゃえば良くない?」という発想から生まれた熱燗向けの一本。鰹節の旨味が染み渡る深いコク。こういう自由な実験ができるのも、クラフトサケというジャンルの懐の深さです。
番外編:老舗蔵の「その他の醸造酒」もある
ちなみに、「その他の醸造酒」を造っているのは新興のクラフトサケ醸造所だけではありません。福島の老舗蔵・大木代吉本店の「楽器正宗 alternative」は、蜂蜜とホップを使った意欲作。ジャンルをひとつに決めなくていい——この流れは、伝統ある清酒蔵にも広がっています。
👉 「日本酒じゃない」からこそ、日本酒の未来が見えた。楽器正宗 alternative 2026 レビュー
🍚 どぶろくとクラフトサケの関係——ざっくり整理
「どぶろくもクラフトサケなの?」という疑問、あると思います。
協会の定義では、どぶろくもクラフトサケのひとつ。日本酒に必須の「こす」工程を経ないため、法律上は「その他の醸造酒」になるからです。
ただし、どぶろくには「どぶろく」という立派な名前と長い歴史があり、昔ながらの造り手さんもたくさんいます。どぶろく=すべてクラフトサケ、というわけではない、と覚えておくのが正確です。このあたりの深掘りは、また別の記事でじっくりやります🍶
📝 まとめ——「その他」と呼ばれる場所に、未来がある
最後に、今日のポイントをおさらいします。
- クラフトサケ=日本酒(清酒)の製造技術をベースに、従来の日本酒では法的に採用できないプロセスを取り入れた新ジャンルのお酒
- 法律上の分類は「その他の醸造酒」。ホップ・フルーツ・コーヒーなどの副原料や、搾らない「どぶろく」スタイルが該当
- 誕生の背景には「新規の清酒免許が実質取得できない」という現実。規制の中で見つけた新しい道がクラフトサケ
- 「クラフトサケ」は商標であり、クラフトサケブリュワリー協会の会員が許諾を得て使っている名称
- haccoba・稲とアガベ・木花之醸造所・LAGOON BREWERYなど、個性豊かな醸造所が全国に続々誕生中
クラフトサケブリュワリー協会は自らの使命を「消費が低迷する日本酒市場を変革すること」と表現しています。つまり逆風は、造り手たち自身がいちばんよく分かっている。それでも「米の酒を造りたい」という若い造り手たちが、次々と醸造所を立ち上げている。
この事実だけで、一杯やれる気がしませんか?🍶
そして、管理人の願いはひとつ。クラフトサケは新しいジャンルですが、ベースにあるのは紛れもなく日本酒の技術です。だから、日本酒とクラフトサケを別物として線を引くのではなく——長い歴史と経験を持つ日本酒業界が先輩として支え、一緒に発展していってほしい。協会が掲げる「日本酒とクラフトサケが共存できる未来」に、管理人も心から乾杯したいと思います。
知らずに出会って、飲んで、驚いて、調べて、もっと好きになる。クラフトサケは今、その入り口がいちばん開いているジャンルです。次の一本に迷ったら、ラベルの隅の「その他の醸造酒」の文字を探してみてください。そこには、日本酒への敬意と、発酵の未来が一緒に詰まっています。
✍️ 編集後記
この記事を書くにあたって各醸造所の公式サイトを読み込んだのですが、どの蔵のステートメントも、熱量がすごい。酒造りの話をしているはずなのに、気づけば地域の未来やまちづくりの話になっている。
haccobaの「珈琲店」を初めて飲んだとき、管理人は「これが『ジャンルを超えた酒』の本当の意味なのかもしれない」と書きました。あれから何本かのクラフトサケを経て、いま思うのは——ジャンルを超えるのは、お酒だけじゃなくて造り手たちも同じなんだな、ということ。
酒蔵なのに駅舎で、醸造所なのにまちづくり拠点で、どぶろくなのに最先端。
肩書きがひとつじゃない生き方、ちょっと憧れます。管理人も「日本酒ブロガーなのに◯◯」の◯◯を、そろそろ探そうと思います😂
本記事の情報は2026年7月時点のものです。各醸造所・銘柄の最新情報は公式サイトをご確認ください。

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